金子文子　ウェブ記念館

2020/7/239:45

2015ムンギョン7/23 金子文子追慕89

　金子文子が獄中で死去した一九二六年七月二三日から八九年の時を経た。命日に合わせて金子文子の墳墓と墓碑がある韓国聞慶市の朴烈記念館敷地にて追悼会が開かれた。

　記念したシンポジウムの登壇者として招請され、金子文子の意思とその活動、韓国のアナキスト、独立運動家との協同した闘いを語ってきた。

　ソウル市内南部の発展したエリアの地下鉄「良才」駅に参加者は集り聞慶市がチャーターしたバスに乗り込む。高速道を二時間余り走行し聞慶市に至る。

　墳墓は石で四角に囲われ盛り土がされている。その横に最初の地から変遷があるがアナキスト同志たちがカンパを寄せ合い建立した墓碑が屹立している。

　追悼式は極めて儀式的であったが朴烈の生地の住民たちの思いは伝わる。一九二〇年代に死去した一人の日本人がどのような立場に居たかを熟知して参列していた。

　一九三三年、駐中国、有吉日本公使爆殺未遂の「上海爆弾事件」で弾圧された三人の活動家の一人元心昌の顕彰会から献花が寄せられている。

　記念館内でのシンポジウムは午後から開かれ『金子文子、韓国独立運動家と共に生き影響を与えた短かき生涯』と題し発言した。一部を引用する。

『金子文子が韓国の同志たちに、どれほど敬愛されていたか!!　金子文子が日本の刑務所で死んだ後に同志たちが追悼の集まりを警察に弾圧されることを覚悟して開いた。そのことから、知ることができる。

「私は日本人ですけれ共、日本人が憎くて憎くて腹のたぎるのを覚えます。私がその時、ただ目に反射されただけの出来事は、大きな反抗の根となって私の心瞠に焼き付けられて居ります。

　私の在鮮中の見聞は、私をして朝鮮人のあらゆる、日本の帝国主義を向うへ廻（まわ）しての反抗運動に異常な同情を持たせました。

　私は上京すると間もなく多くの朝鮮の社会主義者或は民族主義者と友人になりました。私は実際此の種の運動をよそ事として手安く片付けることができません」服部富枝宛手紙より。

　金子文子のこのような思い、朴烈と出会ってからの韓国のアナキズム系の独立運動活動家たちとの協同した運動が、刑務所に囚われ、死去した後も韓国の人々に影響を与えた。

　早稲田大学で四〇年にわたり日本近現代史、思想史を教えてきた研究者、鹿野政直（かのまさなお）は二〇〇五年に岩波書店から青少年向けに著作を刊行した。タイトルは『近代国家を構想した思想家たち』。金子文子を「アジア・世界のなかの日本」の章において紹介している。その章では他に内村鑑三、岡倉天心、宮崎滔天、石橋湛山らが紹介、記述され日本社会の著名な人物と同等に金子文子の評価がされている。

　鹿野は「二四歳で獄中に果てた金子文子は、近代日本の朝鮮観という、偏見と差別のとうとうたる流れのなかで、それに抗する杭のように屹立している」と最大限の評価をなしている。

　日本が明治維新によりアジアにおける帝国主義をすすめ、台湾占有、韓国を強制併合以降、日本社会、民衆の中に東アジアの民衆への理由なき優位意識と差別が広がっていった。

金子文子は自らの生活体験を経て偏見と差別なき心を得て、さらに社会の変革を求めるために韓国の独立を目指すアナキスト同志たち共に運動を開始したのである。　

「戦後70年」その日本社会で金子文子が一部の知識人から評価され始めたのは50年前であった。しかし日本社会、民衆は金子文子に学ぶことはせずに日本に残らざるを得なかった在日の韓国民衆に「偏見と差別」を持ち続けた。70年前に日本帝国が解体しても「偏見と差別」の流れを断ち切ることができなかったのである。

　そして今、安倍という独裁政治家が戦争法（安保法）を国会で強行採決し日本は再び「戦う国家」になり、かつて東アジアを侵略した日本帝国の歴史を繰り替えそうとしている。

　日本社会の独裁と差別に抗する意志と闘いは金子文子が百年近く前に培（つちか）ってきた生き方と、獲得しようとした無支配主義（アナキズム）に学ぶことができる。

　今、韓国の民衆の中でさらに金子文子への評価が高まることは日本社会が誤った方向へ踏み出すことへの警鐘になる』。

カテゴリ：

コメントする

名前
	情報を記憶評価顔星

最新記事(画像付)

リンク集

朴烈　ウェブ記念館

和田久太郎

『斷片』萩原恭次郎の世界

初期社会主義/1906→1909

中濱鐵/詩人/ギロチン社

上海/アナキスト/韓国独立運動

アクセスカウンター

今日：
昨日：
累計：